ガバナンスって・・・

 掲示板等で渦中の東芝の求人が少し話題になったようだ。
 おおよその感じでは、少なくとも当面のカネがなさ過ぎるため事業縮小待ったなしな企業の求人であることへの驚きだとしてうけとめられたことに起因するもののようで、「東芝:改革担当者求む…転職サイト掲載で話題 (2/16 TNCニュース)」にもあるように『東芝は「経理財務担当者は通年採用しており、米原発事業の巨額損失を受けて募集しているわけではない」などとし、「従来から行っている採用活動の一環」と説明している。』といった形で対応されているようである。
 しかしながら、「苦境の東芝、「経営改革担う」人材募集中 「危機発生時のメディアコントロール」担当者も (2/16掲載 2/17追記 ITmedia NEWS)」によると『求人情報は、2月17日午前10時までに削除された。』とあり、求人メディアサービスプロバイダ側であるインテリジェンスの規定に抵触したのか単に東芝側が取り下げたのかは分からないが、言ってることと対応(もしくは結果)に齟齬がある、ということにはなる。

 で、せっかくなので『従来から行っている採用活動の一環』がどういった求人だったのか業務内容について転記してみたい。

///1件目///
仕事内容:
経理財務 ※東芝のコーポレート・ガバナンス改革を担っていただきます
【「新生東芝」のコーポレートガバナンス改革を担っていただきます/コーポレート、カンパニー、子会社等で幅広い経験を積むことができます】
業務概要:
コーポレート、カンパニー、子会社、海外など、職種は経理分野で国内外のいろいろな部署での活躍を想定されております。具体的な配属先は、書類選考・面接の中で決定します。また、経理として決算業務をするわけではなく、管理会計・経営分析などの立場での活躍を想定しておりますので、経営的な視点で活躍して頂きます。将来的には管理職としてのご活躍を期待しています。
学歴:
大学院、大学卒以上
必要業務経験:
下記いずれかのご経験をお持ちの方
財務会計のみならず事業計画作成や事業支援などの経営管理業務
・決算実務業務もしくは監査法人や会計事務所での同等業務

///2件目///
仕事内容:
※部分が「幅広い経験を積みながら東芝の経営改革を担います」になっているだけで他は1件目と同じ
業務概要:
1件目の最後の管理職云々の1文がないだけで1件目と同じ
学歴:
大学院、大学、短期大学、専修・各種学校高等専門学校、高等学校卒以上
必要業務経験:
下記いずれかのご経験をお持ちの方
経理経験(業界不問)
・簿記2級以上の知識

///3件目(契約社員)///
仕事内容:
グローバル広報・メディア対応・IR担当 ※幅広くポジションにて経験が活かせます
職務概要:
<グローバル広報・広告>
グローバル広報戦略の海外展開(海外メディアとのネットワーク構築)、グローバル広告戦略立案、施策実行
<メディア・プレス担当>
メディア・プレスリリース(プレスインタビュー、メジャーPR雑誌)、株主総会Q&A対応等
<IR・マーケティング担当>
IR戦略立案、施策実行(プレゼン資料、Q&A作成、会合設定、競合他社のIR分析)、マーケティング情報の分析、提供
いままで受け身のメディアコミュニケーションから積極的にメディアとリレーションシップを築き、危機発生時等はメディアコントロールをご担当いただきます。また、いままでドメスティックだった広報活動のグローバル展開を担っていただきます。
学歴:
大学院、大学卒以上
必要業務経験:
・IR戦略立案、施策実行や競合他社のIR分析
・メディア、プレスリリースや株主総会Q&A対応
・グローバル広報戦略の海外対応(海外メディアとのネットワーク構築)
※ビジネスレベルの英語力が必須となります。
【語学】
◆必須
・英語(上級レベル)

とのこと。
 皮肉でもなんでもなく大企業だけあって非常に分かりやすく作られている、、、と思われる。
 ただ、過去の情報を抽出できないのでその継続性について何ともいえないが、どちらかといえば、作られてい「た」が正しいのではないだろうか、という気がしなくはない。
 もし、先の会計不祥事以前の求人から経理・財務業務においてコーポレートガバナンスについて触れられていたのであれば間違っているのかも知れないが、『巨額損失を受けて募集しているわけではない』とか、いわゆる会計上の問題に関してガバナンスが問われているからこそガバナンス改革というトレンドワードをぶっこんだ的に見られても不思議ではないという関連性は別にして、そもそも経理職においてその仕事内容の主体がコーポレートガバナンスなのか、という点が疑問点となる。
 まず、今回の会計不祥事に関わらず、ガバナンスやその改革が経理部門にのみ大きく依存する考え方、システムではないところがあろうと思われる。
 そして、たとえ求人内容がたとえばある程度組織として独立した内部監査部門に限定したものであったとしても当人に課せられるガバナンスの考え方や実践はその部門で完結するものでもない。
 また、この手の会計不祥事のような問題で「会計不祥事を起こさないのがガバナンスだ」的な等価として捉えている人を散見するのだが、ガバナンスは別にそれだけのために存在しているわけではない。
 何となくではあるが、経理的な問題が浮上してしまっているので、問題意識をもってことに当たれる人が欲しいっすねぇ、的なところから関連しそうなことばをひねり出し、取ってつけたかのような構造になっているように見える。
 3つめとしては、はたして、東芝自体が監査法人の承認がないまま業績見通しの会見を行っているような状況下で経営陣からいかようなガバナンスにおけるコミットメントがなされているのかわからない、もしくはその改革そのものが改革されなければならない可能性が高いことを想定すれば、軽々しく現場レベルでのガバナンスを語ってよいものかどうか、という気はする。
 で、ここまでは、ガバナンスがどう扱われるべきものか、という話であるが、もう1つ。
 「コーポレートガバナンス」と「コーポレート・ガバナンス」という表記の揺れがあること(1件目側)、1件目と2見目のコピペっぽいつくりになっている関係上、「経営改革」=「コーポレートガバナンス改革」になっている(2件目側)、という他の箇所に比べて極端にやっつけっぽいコピペ作業が想像されることも挙げていいとは思う。
 得てして、こういった他と温度差のある不注意っぽい目に見える結果、成果物とそれを生み出す脇の甘さ(個人、組織、システムも含む)とその背後にある認識の曖昧さ、誤謬(意図したものではないということとする。意図したものであれば、パターンが増えすぎるため)がセットになっていることが多く、これさえも広義でいえばガバナンスの問題の1つであろうと思われる。(顕在化した現象によっては、コンプライアンスや企業倫理やリスクマネジメント等で扱われることにもなろうかと思うが、ここでは、という話。)
 悪い様にばかり考えるのもあまりいい傾向ではないのだが、記事中に『「火中のクリを拾うようなもの」』と表現されていたりする状況どころか、火中に入っていくことは変わりなくても、そこで火をおこすこと、もしくは火をおこす準備をしてもらうことから始めなければならないとするなら、それを地獄と呼ぶかアグレッシブにチャレンジできるエキサイティングなミッション(意識高い系っぽく表現してみた)と感じるのかは人それぞれだとは思うので、ただ見る側としては、どうでもいいといえばいいということにしたい。

 えっと、3件目の求人だが、これは、、、
 『危機発生時等はメディアコントロールをご担当いただきます』って書くような業務内容の求人を、なぜ渦中にありながら、公開求人でかける、もしくはかけっぱなしで放っておくのか?というところに関して、メディアコントロールする以前に認識すべきリスク管理の問題じゃないのか?メディアコントロールしている社員を後ろから撃つ気満々なの?という気がするが、いい始めてもきりがないので終わる。(もともとそういう目的での求人ではないといってすむ問題ではない、というところが問題という。悲しいかな。)

 んー、もう正直なところ、頼むからもう少ししっかりしてくださいとしか言いようがないかと。