「イ」が大きい

 せっかくなのでウイダーinゼリーを買ってみた。
 実は、前回記事にして以降、旧パッケージが残っていないかなぁ、と機会があるごとにちょろちょろ確認していたのだが、さすがに店頭に旧パッケージは残っていなかった。
 何をもって「旧」というのか難しい気がするが、どうせなのでくだんのパッケージは以下「限定パッケージ」と呼ぶことにする。
 で、あわよくば、双方並べて比較してみたかったが、致し方ない。
 幸い、googleさんが何とかしてくれてしまうので、それに頼ることにする。
 今回の件は、いろんな意味で有名な人がデザインした関係上、デザインとしてどこに問題があったのかなどといろいろ考察されているよう(実はググった際に一覧表示されているのを確認しただけで興味ないので中身までは読んでいないが。)なのだが、それ以前の問題に気付いてしまった。
 それは限定パッケージを頭に思い浮かべながら店頭の陳列棚に立てば分かってしまった。
 まず、商品はその外形と中央の「in」という文字(いわゆるシンボル)があれば分かるという構造ではある。
 しかしながら商品にバリエーションがあるため、そのポジショニングがどうとかいう以前に、購入者が何か分かるようにしなければならない。
 デザインをした人の、英語の成績にコンプレックスでもあるかのような中二病が英字で文字を書きたがるかのごとく、なんでもかんでも英語表記するところも、私自身英語ができない身としては使い勝手の悪い一因ではあるのだが、ここでも同様にこれまで日本語表記されていた「エネルギー」などの文字が限定パッケージでは英字に変更になっている。
 ただ、「エネルギー」とかだけでは、イメージがぼやけすぎているため、旧パッケージでは、もう少しイメージを具現化させるためにキャッチコピーを配しているが、限定パッケージでは取り除かれ余白になっている。
 もはや、私以外は日本語表記よりも英語表記の方が直感的に理解できるようになっているのかも知れないが、親切にも、下端にその商品のバリエーションの特徴を示すアラビア数字を大きく配することで、何度か購入すれば商品と記号が結びつくような構造(例えば、そう思うのは鉄ちゃんだけかも知れないが、500、700とか言うと、500系とかN700系とかの車体がイメージされるようなもの、なんだけどな・・・。ダメか、こんな例では。)であり、英語表記の商品バリエーション名を補完する形になっている。
 そう平置きされている状態の画像を見たときは思っていた。
 が。
 陳列棚の前に立って気付くのは、棚の最前面に地震時の商品脱落防止のためのプレートがあったり、値札を差し込むためのプラスチックの帯(棚の端から端までどこでも値札が挟み込めるようになっているやつ。正式名称が分からない。プライスレールとも少し違うような・・・)があったり、実際に値札自身があったりして下端の数センチは販売現場では全く見えないのである。
 コンビニの場合はスーパーや量販店に比べて見やすい構造になっているとは思うが、残念ながらコンビニ限定商品ではないし、ましてや平置き商品でもない。
 そして、スーパーや量販店では、省力化のために中箱を利用した陳列が現場効率化のための競争力として一世を風靡した時代があったが、逆に生産者側が陳列可能な化粧中箱で出荷するようになったため、どこでもそれが当たり前になって久しい。
 ただ、中箱を利用して陳列すれば、同様に下端は見えない。
 販売現場で商品を取りやすいように商品を棚の前方に押すのとは逆に後方に押せば角度的に見えなくはないが、それではある意味店舗への嫌がらせである。
 また、以前からそうだったのかどうかは分からないが、陳列時に前を向く中箱の面に商品のバリエーション名が日本語で印刷されているのだが、いずれにせよ先の理由からこれも見えない。
 直感的にバリエーションを理解できなければ購入に結びつかない可能性があるとすれば、補完的手法を自ら捨てたことになる。
 しかし、反論もあろう。
 だって、書いてるじゃん、と。
 小学生のころ、水道週間とか防火週間とかのポスターをクラスで美術の先生に書かされたものだが、見えないところに描いても見えない。見ないところに描いても見えない。とよく言われたものだ。
 要はポスターなんかだと、描けば伝わるのではなく、伝えるために描いていることを考えなければならない、ということであろう。
 この下端の問題は、少なからず小学生に教えるレベルの技法を無視した方法がとられたと言えるだろう。
 一度でも販売現場を見ていればその間違い(さすがにこれは間違いと断じていいだろう。全国の販売現場の運用をすぐさますべてひっくり返すつもりなら別だが。)に気づきそうなものだが、逆にいうと、現場を嫌というほど見てきた森永製菓の営業がよくOKを出したものだし、社内で気づく者は一人もいなかったのか?という疑念もわきはする。
 もはや、大人の事情でどうにもとまらない状態であったため、分かってた上でとりあえず限定パッケージで出して、限定なのですぐ止めた、むしろ止められたことがほめられるべきということならそれはそれですごいことかも知れないが。
 先日の記事を引用すると、『従来の「エネルギー」「マルチビタミン」「プロテイン」という機能性を軸にしたラインナップから、「エネルギー」「カロリーハーフ」「カロリーゼロ」というカロリー別のラインナップに変更。』といったグランドデザインを示しておきながら、販売は低迷し、『森永製菓はその原因について、「リニューアルのコンセプトを浸透することができなかった」と説明する。カロリーのない「カロリーゼロ」が比較的好調な一方、1個90キロカロリーの「カロリーハーフ」が苦戦。「カロリーハーフ」はリニューアル前の「マルチビタミン」をベースとする商品だが、カロリーゼロでも、エネルギー補給ができるわけでもない、「カロリーハーフ」に置き換えたことで、その価値を訴求しにくくなったものと見られる。』というように結んでいるのだが、グランドデザインが『カロリー別』という機軸であるにもかかわらず、それが店頭に陳列すると見えないという状態である。
 一方、客に直感的に映る部分は、今回付加されたパッケージ上端のカラーバーではなかろうか。
 せっかくやるのだったら『カロリー別』をユニバーサルデザインの観点からバーの長さとか形状かなにかで直感的に分かるようにしておけばまだ意味があったのかも知れないが、よりによってそれは商品バリエーションのフレバーを直感的に伝える色であって、『カロリー別』という機軸とは全く関係がない。
 「マスカット」→黄緑、「グレープフルーツ」→黄色、「ぶどう」→紫といった具合である。
 『その価値を訴求しにくくなった』というより、フレバーの英字が長かった(苦戦した「カロリーハーフ」はグレープフルーツ味で他のフレバーに比してかなり長い)ために敬遠されただけとか、商品バリエーション名の英字が長すぎることで文字が小さすぎたために他に流れたとか、「CALORIE 0」の「0」だけが目に飛び込んで理解できたのでそれを選択したとか考える方が自然な購買動機ではないかと思われる。
 ただ、小売のバイヤーからすれば、入荷する商品を選択する時点で訴求力が足りないと考えて入荷を控えるまたは外す可能性もあるかもしれない。
 店頭の棚割りには当然限界があるわけで、全種類陳列できるならよいが、何種類かを選ぶ必要が発生する可能性は高い。
 例えば2種類を棚割するとして、とりあえずプロテインは外すとして、およそ、定番の「エネルギー」+「カロリーハーフ」か定番の「エネルギー」+「カロリーゼロ」の選択を迫られるだろう。
 この場合、正反対の商品を並べた方が売上が上がるだろうと考えたとするなら、やっと『その価値を訴求しにくくなった』といえる条件なのではないのかと思われる。
 当然、バイヤーが店頭に並べなければ、「カロリーハーフ」が別の何らかのカルト的理由で爆発的な人気が出ない限り商品も出ないといえる。
 ただ、全種類を棚割りしている店舗だけを選んだ上で、有意に「カロリーハーフ」が売れていないというデータも森永製菓自身分析できる立場にあることを考えれば、今回デザイナーが監修したブランドコンセプト設計自体からして新しい顧客を獲得するどころか既存の顧客を逃すものだった、と言えなくもない。
 そもそも『カロリー別』というのが、ハーフであることが重要なのか、具体的数値が訴求事項なのかカロリー換算した具体例(定番商品の「エネルギー」はおにぎり1個分というキャッチフレーズが存在する。)が訴求事項なのかあまり練られていない(練っているのかも知れないが、それが表出していない)時点で題目だけ、ただの意味も意志も持たない文字列だった、と取られても不思議ではない。
 それ以前に、カロリーハーフということばは数十年前(20年以上前か?)から商品の付加価値として社会的に認知され、各食品メーカーがそれに対応する商品を出しているが、先述の『カロリー別』における注意すべき点などは当然として、それ以上の様々な考察の末商品をリリースおよび販売時における相互のコミュニケーションを行っていることを考えれば、素人目に見ても安易であったように映る。
 結局のところ、
 ・なし→半分→標準→いっぱい
 ・0→100→200→5000
 ・霞み→バナナ1本ぐらい?→おにぎり1個→ドーピング
   (ただし、最後の「プロテイン」はそもそも同一軸上には乗らないし、対応しない。ちな90kcalしかないし。)
のような一貫性がラインナップ全体に存在していないということだろうと思われる。
 ただ、一貫性があれば売れるというわけでもないと思われるため、一見ぐだぐだに見えるグランドデザインや機軸が有効という定石が今回偶然にも外れただけなのかもしれない。
 なにしろその世界での第一人者だから云々。

 まぁ、くだらない話は別として、気になったのは、何件か回ったスーパーの中で1店、ウイダーinゼリーを扱っていないと思われる店が存在したことである。(店員に直接聞いたわけではないが)
 ここ数ヶ月の販売不振で通常販売商品から外れたとかなら森永製菓にとってかなり大変なことだろう。
 とにもかくにも、これ以上被害者を増やさないでくれることを望むのみである。





 で、久しぶりにウイダーinゼリーの定番であるエネルギーを飲んでみたのだが。
 うーん。
 何か昔より、マスカットの苦味が薄くなったような。
 飲みやすくなったとは思うんだけど。
 なんか、ぬあ゙ぁ゙ぁ゙、がっつり飲んだわぁぁ〜、さ、お昼ご飯終了、みたいな感じがないっていうか。
 って、5、6年以上も昔な記憶なので、全く役にたたないとは思うが。