エクストリームではないかもしれない

 先日記事にした増田の「今の学校にいることを後悔しています。」に10/31付で追記があったので再度触れてみる。

 一読者として考え方を改めなければならないなぁ、と感じたのは、今回に限り数点にカビの発生が確認された、程度の案件だと勝手に想像していたことだと思う。
 追記部分を見る限り、恒常的に食品衛生の観点から考え得る範囲を易々とぶち抜いているところからするに、既に保健所に連絡なり通報が行っている可能性が高い。
 それでも調理中止などの措置が保健所から指示されないのは、地域的、社会的な何らかのしがらみなりの大人の事情が存在するか、もしくは食中毒などの重篤な事案が偶然にも未だ発生していないので指導レベルで収まっているのか、など様々な状況を想定できなくはない。
 ただ、そういった問題よりも増田個人として目を向ける必要があるのは、増田自身が製菓や食に関する企業に就職しようとするときに、風評被害を受けはしないか?という観点も考慮してほしいということである。
 というのも、ろくにものを教えない学校よりもこういった食の安全に頓着がないもしくは安全ではない製品を恒常的に提供してきた学校の方が採用者や現場の者にとっての色眼鏡は厳しいのではなかろうかと想像できるし、また同様にそういう危険因子の情報は飲食店のネットワークによって一気に広がってしまうものだからだ。
 とはいえ、そういった初期の段階におけるマイナスからの出発はオーナーの特殊性癖などの条件が付加されるような特別な現場(具体例は割愛するが)などでない限り、やがて増田個人の能力と意識、考え方が製品に表れてくればすぐに取り返すことができるだろう。
 ただ、面接時などで一時的に不遇な立場に晒されることに物怖じしない確固たる自己をもって卒業してもらいたいと思う。(あ、話の長い校長っぽい。)

 書くと私の方が特定されそうだが、小都市で調理師製菓専門学校が1つしかないような地域では、そこの卒業生が地域にあふれるわけだが、SNSがなかった時代から店舗や業者同士のネットワークを介して今年の卒業生は講師が入れ替わってろくなこと教えてもらってなさそうとか試食したけど学生のレベル低かったから今年は採用見送るかなとかいろいろ動いていたりする。
 大都市の人口流動性が高い地域ではすべてを把握することは難しくなるためニュートラルに受け取ってもらえるかもしれないのだが。
 一方的に形成される先入観というのは腹立たしく理不尽なものではあるが、事前に準備しておけば次善の策として機能するのではないかと思われる。
 それが取り越し苦労だったとしても、多分、そういった考察は今後のキャリアに生かされるものと思う。

 まぁ、なんというか、事例を読む限りエクストリームというよりは自滅へ限界突破しているような領域としか言いようがない。
 わらびもちはなんというか。
 わらび餅粉さえ使わないなんちゃってわらびもち風食品を含めると経日変化は予想も難しいかと思うが。。。
 まぁ、大体わらびもちをその日のうちにというか作ってすぐに食べなかったことがないので分からないが、放置したらういろうっぽくなるのか。
 うーん、確かにういろうも原料はよく似てるわけだが。
 さすがにわらびもちを常温で5日間持たせなければならないというなら、かなり難しいと思うし、多分、問題はそこではない気もする。
 マフィンの方はどうなんだろう。
 糸引くのか?
 ケーキとかだと放置してると水分が多いときなどでは納豆のような発酵したっぽい臭いがしてひどい場合は糸を引くことがあるが。
 あと、カップの蒸しパンが糸を引いてたので回収ってのは昔あったけど。(古い話だなあ。何十年も昔の話だが。)
 プレーンのマフィンだと2日ぐらい忘れて放置していても食べることができた(目立った病理的変化が起きなかっただけかもしれないが)ので、芋のペーストを使用したことが原因なのかそれとも別の理由があるのか分からない。(比較実験をしてみれば分かるかも知れない)
 はてな民には料理の得意な人も多くいると思うので誰かが書き込みそうではある。

 とにかく、食品にとってかなり過酷な条件下で、対外的に問題とならないレベルの製品を作らなければならないことが卒業まで何度あるかは分からないが、実習を現実に甘んじて無理やりやり過ごすのか対策をするしかないのではないかと思われる。
 ここで、『それでもまともな商品ができない』というのは、2つにわけて考えるべきで、1つめは商品を作ること、2つめは商品を顧客に引渡し顧客が口にすること(さらに2をいわゆる購入と喫食とに分割することもある)になる。
 レシピというのは、その内容を見てわかるとおり料理が完成するまでのプロセスだけで特段いつ食べるかを明示的に規定していることは少ない。
 多分、カビが生えたスイートポテトも作った直後はちゃんとまともに食べられるスイートポテトであったと思われる。(カビ毒が問題視される場合などはこの際ややこしいので除く)
 レシピにいつ食べるかを明記していないことは、ほとんどの場合5日ほど放置しても変わりなく食べることができることを担保するものではなく、およそ数分とか数時間とか1日以内とかだと想定した方がよいと考えられる。
 逆に言えば、『クックパッドなどでレシピを探して作って』も、例えば5日持たせるためのレシピという特殊要件を満たすようなものは、ほとんど掲載されていないのではないかと思われる。
 あと、今後実習で何を作るかは分からないが、スイートポテトのような個別パッケージ物であれば、窒素充填であるとか脱酸素剤の方が味はともかくカビの発生は抑えられたかもしれない。(食品用の窒素スプレーは開栓後のワインの風味の維持とかの用途などでググると出てくると思う。)
 多分、こういったレベルの小手先の方法ででもある程度対策に寄与するといったものも多いと思われるため、事前に考察しておいた方がよいのかもしれない。
 とはいえ、こういった変に小賢しいと担任に思われかねない方法は、ばれるとよくないことが起こるかもしれないので、細心の注意を払う必要はあるとは思うが。




 と、いろいろ書くことはできるけど、一言で言うと。
 ひどいなぁ。
 そう嘆息するしかない。
 これに対して、増田に、がんばれ、くらいしか表現できないのも悲しいかな私の無力さとしかいいようがない。(たとえ別の何かが可能だとしてもそれは私の傲慢でしかないわけだが)
 願わくば、増田がこのような経験を期にお客さまから慕われる職人になってくれることを。