銅貨でどうか

 まず、先に読んだのは「移民嫌いのトランプ大統領、まじでホワイトハウスのスペイン語サイトを閉鎖」というギズモード日本語版の記事なのだが、個人的にはおちゃらけ過ぎていて頭に入ってこないので、元ネタ(翻訳といっていいのかどうかかなり怪しいのでそう表現した)であるGizmodo US版の「 How Much Would It Cost to Rebuild the Spanish White House Website That Trump Killed?」とつき合わせながら読んだ方がましかもしれない。
 まぁ、なんだ。
 センターで半分とれなかった私でも読めるのでほとんどの人はなんとかなるだろうし。

 で、多分日本語版の著者が大きく誤訳しているもしくは訳を抜いたために原文の本意を伝えられていないと思われるところは『米連邦政府の予算は3兆ドル(約340兆円)に上ります。そのなかで、スペイン語を主要な言語とする人のために割かれる翻訳コストなんて、まさに微々たるものでしかないでしょう。ここをケチって、ヒスパニック系の住民への情報提供を拒む』というところだと思われる。
 一応原文でいうと『“There are small companies that spend this much every day on translation,” Acclaro's vice president of client development Matthew Grotenstein told Gizmodo. “Given the amount that the US government spends on translation and interpretation, putting a budget aside to offer White House-dot-org in Spanish is a small price to pay compared to benefit of having the information available to that community.”』あたりが該当するものだと思われるが、原文では、ちんけなことにケチケチすんな、と言っているわけではなくて、アメリカ国内に現状存在するスペイン語母語とするコミュニティに対して利用可能な情報提供を行うことへの国益と翻訳にかかる費用とを比較した場合に翻訳した方が有益ではないか、としているわけで、別にアメリカ連邦予算と比較しているわけではないところだろうか。
 まぁ、こういった話に私が過敏に反応するのは、いわゆるちんけな個人経営者とかを経験したり、企業内でも予算的に独立性の高い事務所などの長や会計を担当すると分かる話ではあるのだが、要は100万あるんだから1円ぐらいどうだっていいだろ?という論理を通すことがどれだけ危険なことか理解できていない(正しいか正しくないかは内容によるため、意図して「危険」とした)ことに憤慨しているだけともいえる。

 で、こんなくだらないネタをチラ裏を書くために書き始めたのではなく、もっと別のチラ裏を書こうと思ったからである。
 それは、英語版の記事の下のほうに、トランプ大統領の発言らしきものが載っていて、『“We have a country where, to assimilate, you have to speak English,” Trump said. “I think that where he was and the way it came out didn't sound great to me. We have to have assimilation to have a country. We have to have assimilation.”』という部分である。
 で、訳はしないが(察してね)、ここでよく出てくるのが「assimilation」である。
 これは、日本語だと「同化」と訳されることが多いと思う。
 歴史の教科書で出てくる文化的同化政策などといった場合に使われるアレである。
 で、個人的にトランプ大統領に対して直接的に影響したり関係したりすること自体ありえないのでニュートラルでありたいと思ってはいるのだが、少なくとも、「同化」を希求するのは歴史的経験者(いや、時間軸方向にすべてを実体験したわけではないが)として、考え方を尊重はしたいが一部反面教師として生かしてもらいたい、という気はする。
 まぁ、あまり具体的な話には言及しないが、そういうことで。
 とりあえず、アメリカの場合は憲法公用語の規定がないので公用語がないことになっている(州単位では存在する州もある)わけだが、さすがに1980年代の公用語運動あたりを再び引っ張り出す気かどうかは分からない。
 ある意味それ(公用語の規定、およびいわゆる言語権という優先的権利。日本にそれがあるかどうかは知らないけど。)が通ってしまえば、全体の税金ではなく当該言語のデータを必要とする者もしくは団体等がカネを出し合って(先の日本版の記事からすれば微々たるカネらしいので負担にはならないのだろう)提供すればいいだけだということにもなるだろう。
 また、スペイン語(多分、メキシコ系スペイン語だと思うけど。)を同化しようとしても今のアメリカでは現実に不可能なので、ある意味みみっちい嫌がらせレベルに見えなくもないが、それをアメリカ国内のあらゆる言語に適用することになれば、アメリカ先住民の問題も発生しかねない。
 ただ、そこまで踏み込むのか?というとそうでもなさそうだし、だからといって個人的信念(というか、単に選挙基盤ではないといってしまってもいいのかもしれない)は自身の権限内で貫きたいというところがあってなんとなくちぐはぐ、というかまだら模様になってしまっているかなぁ、という気はする。
 まぁ、今公用語化なんてのをやったらまた世界中から「分断ガー」とかいわれそうだが。
 EUなんかだと他言語政策とってるんだし、そっちが先進的っていわれてたりするが、その実、人口流動の関係で少数言語は絶滅が危惧されているわけだし、もうどっちでもいいんじゃない?メリットしかない手法なんてねーべさ、とか思ったりする。
 いずれにせよ、どうなっていくか見守りたいところかなぁ、と思った。