昨日のWBS

 立命館の食マネジメント学部の話。
 中身はどうあれ、結構各大学にある食に関する学科から一歩踏み込んだことを行う学部ができることは喜ばしいことだと思う。
 というか、ぶっちゃけうらやましい、とか思ったり。
 とはいえ、結果的に就職予備校化するのかアカデミックな研究分野寄りに存続するのかそれとも別の方向性なのかは見えないけれども、それは言っても詮無いことなので。
 感覚的には、マネジメントする対象や範囲が非常に狭かったり特定分野に限られてしまうとそれは「食」をマネジメントするという目的としては適切ではなく、コメンテータの梅澤氏が『ひとりひとり、一社一社ががんばっている状況』というようにマネジメントされた状態に近づけないことになる。
 結局のところ、マネジメントというのはマネジメントを行使できる立場になって初めてマネジメントとして機能するのであって、そうでなければ実績のない中途半端なゼネラリストの無駄知識オタクを量産するに過ぎない。
 で、それはそれとして、食感の科学という話が出てきていたのだが、どうも食感の科学というよりは食品製造時のレオロジーについて研究しているような気がしてならない。
 インタビューでも『耳たぶのかたさ』に言及していたように、例えば工業系のネジ締めにおけるトルクの数値化とばらつきの極小化による品質の向上といったようなものと同じ領域っぽく感じ、「食べること」そのものの科学ではないように思えた。
 すでに何十年か前の話ではあるが、食感を口内に投入した物体による口腔内壁への圧力として数値化できる刺激に限定して論ずる場合、当該物体の破砕後の挙動シミュレーションやそもそも口腔内で食品が常にレオロジーとしての特性が卓越しているのかとか口腔内に投入されていない状態の当該物体の特性を数値化して口腔内の感応性とマッチングさせたとしても口腔内での食品の移動がどの程度影響するのかとかを考えると咀嚼自体のシミュレーションが必要なんじゃないかとか言われていたが、多分そういった部分は進んでいないのだろうと思う。
 当時、きたる高齢化社会において歯の問題を抱えたり歯を失ってしまった状態や入れ歯を装着した状態での味覚の変化や食欲、はてはそれに伴う気力の減退などの問題解決に寄与するのではとかいわれていたのだが、歯がなければ柔らかければいいじゃない、まずいというなら試食をくりかえしてうまいのを見つければいいじゃない、という昨今の方向性から見れば、手順としては論理的だが、科学的かというとちょっとどうなんだろう、という気はしていたので。
 とはいえ、調理という行為は科学的に何らかの変成を加える/加わることで作られる(私はそういう認識というだけの可能性もあるが)ことからすれば、文系やら理系やらというカテゴリに関係なくレオロジーなんてものの基礎的な部分ぐらいは知っておくべきだとは思うが。(先の「耳たぶ」といった混練とかホイップとかの撹拌とかがまさにそうなので。)
 多分文系学部らしいという話を聞くので、とりあえず書いてみた。
 文化、人文系と料理の技能に加えて科学的な領域の講義までほとんど必須で理系院レベルのことをガリガリやってたりしたらそれはそれですごいけど。(多分、映像で出てたのは他学科のものだろうと思うしなぁ。)