昨日のWBS

 企業不正の問題について社外取締役に的をしぼった特集だった。
 で、それはそれとして、なぜよりによってという東芝出身の人に現役社外取締役の意見を取材するのか、という。
 たしかにそういった主旨で取材を受けてくれそうで、学者、官僚、銀行出身でないとなると人材がかなり絞られてしまうのだろうけども。
 個人的にそういったジャンルの報道とかに対するアンテナの感度に問題があるとはいえ、社外取締役が企業にとって役にたったとされる事例は、現場も役員も吸い上げられなかった新たな事業の種を提案しただとか、キャリアとそれに裏打ちされた感性からよりよい方向への示唆といったものがトピック的に記事になっている気はするものの、身近にはワンマン社長の税金対策だったり経営コンサルっぽいところから招聘した(もしくは半ばさせられた)お客様だったりするところしか知らないので、本質的に役に立っているのかどうかという次元にないということもあって、思った以上に実感がない。
 とはいえ、番組内で「すでに根回しされているのでその場で勢い込んで反対しづらい」とコメントされつつも「社外取締役に十分な情報を意図的に与えていなかった」りと、社外取締役というのは、知恵などのリソースはありがたく頂くが、あくまでハイドアウトからは蚊帳の外だというかどこにあるのかさえ知らさない状況にある、いわば吸われるだけの存在であるのかなぁ、という気はする。
 さらに狭隘な考え方ではあろうが、番組中で名前だけ触れたガバナンスコードで社外取締役の役割として挙げられているのは、原文はおおもとのそれに譲るとして、大雑把にまとめると、中長期的な経営の助言とそういったことに関係するような重大決定事項を生暖かい目で見守ることとステークホルダー(全体、一部、多数、少数は場合による)の利益相反の調整、それが適正だと思えるレベルで反映させる努力をすることが期待されるということではないかと思われる。
 実際、不正を取り除くことはステークホルダー利益相反を適正な状態にする役目として関与すべきことで、大掛かりな不正は会社の存続を左右する(くだんの企業であれば実質国営企業になろうと消し飛ぶことはないと思う人がほとんどだろうし考慮すべきところではないが、一応一般論ってことで)ことから中長期的な経営においても影響することからなんらかの助言は行われてしかるべきではあると思われる。
 が、世の中某バカッターのように明らかに誰もが不正だと認知できるような構造でもない限り、当の社外取締役が企業内を連日のように行脚してまわったとしても、黄門さまレベルのエンカウント率を誇る能力者でなければ不正など簡単には見つからないだろう。
 そもそも相手もがんばって隠しているわけだし。
 なんだろう、たしかにそうなんだけど、ちょっと求めすぎてない?というか。

 で、日産の件は少なくとも法に触れてしまっているのでそれに即した道筋の定められた措置が取られるというわけなのだが、感覚的に自身の安全をより大きく損なっているはずの神鋼の件について、鉄鋼製品の不正に関して、取締役会でも取り上げられコンプライアンス委員会でも報告された案件であって、隠していたわけではないが、一連の不正を公表するにあたり鉄鋼部門の不正を公表することを避けて通れないと考えた、といったような発言(文字おこししたのではないので主旨のみということで)が、特定の企業から受注し当該製品をやり取りした契約上の民事的な違反行為はあれど、必ずしも会見場を設定し、報道各社と調整し、記者会見を行って世間に知らしめることの有無が、即刻法に触れるのか?というと法に明るいわけでもないのでよく分からないがそうではないんじゃないのかなぁ、というちぐはぐさで私には認知されてしまっているのが妙な心持ちだといえる。
 本質的に今回の不正が取締役会において一般的な公表を求められるわけでもないいわゆる金銭的な意味等で軽微な事故対応であると認知していたのであれば、求められる社外取締役の役目からすれば中長期的な経営リスクを減ずることでもあることから、その事故対応に注力し、根本的な不正対策は後手(基本的に事故対応からすればそれが原則)であることもあり、助言できることも少ないと考えられなくもない、とか思ったりしていた。
 あまり書きたくはないし、書いたところでそれが何の役も立たないのでこういった件での原因の1つとして、個人的にかたくなに設定しないのだが、今回のようなケース(先日の過労自殺の件もある程度類似する)にいたるまでのリスクチェックを行うシステム的な法整備や指導、監督、もしくはそれ相応の罰刑が設定され適切に運用される必要があるところにぽっかり穴が開いている、もしくは網の目が非常に荒いので実質筒抜けなところが多いように思えたりする。
 確かにこういった考え方は、特にアメリカが顕著な経済的なプレーヤーとの対峙として入り口は規制しないが問題が露呈すればかなり思い切った引き戻しや規制を行うという手法であれば有効な手法であり、国内の何らかの規制があり整った環境の上で経済的なプレーヤーは活動すべきだが、それ以外に関してはできるだけ干渉しないという環境下では、規制がより厳しくなるので有効ではないというのもあるかとは思う。
 そういう意味で、辣腕をふるう世耕経済産業大臣なだけあって、全容が未だ不明瞭な段階でありながら、早々に第三者委員会による事実調査、原因究明、再発防止を行うことを「指示」するあたり、すごいとは思うのだが、大臣が『企業のガバナンスに問題があるのか、経営陣の現場の掌握に問題があるのか1つ1つ明らかにしていって(中略、というか映像がカットされていた)このような例が二度と起こらないように取り組むことが重要』と述べるというのは、第三の問題に対する選択肢なんてのは最初からないよ?と明言しているようでこれまたすごいと思ったのであえて書いてみた。
 もうこうなったら、取締役会の会議室にも匿名内部通報的な目安箱が必要なんじゃないかとか。
 どうでもいいけどね。
 なんとなく、今後とも即死レベルでありながらゾンビ化して生き長らえる企業は多そうな気が。
 過去(バブル以降)の金銭的な問題じゃなくて。




 あ、全く関係ない話なのだが、役員会で思い出した話を1つ。
 昔勤めていたいわゆる三流企業の事務をやっていたときに、役員会のあとに「ごみ箱あさり」という仕事があった。
 これは、その会社が自社ビルでもなく、雑居ビルのフロア全体でさえなく、階数がばらばらな複数のエリアを賃借している状態で、かつ他社の人の往来もある共用の廊下などにゴミ箱が設置されていたことに起因する。
 で、なぜ「あさる」必要があるのかというと、役員会が会議室で終わった後、エレベーターホールやトイレなどの共用部分のゴミ箱に役員会の配布資料を突っ込んで帰ってしまう者が複数名いるのでそれをこっそり回収してくるためである。
 で、その伝統的仕事は、過去に当時の副社長がゴミ箱からひょっこり顔を出している役員会の資料を見つけて事務畑のフロアで怒りをぶちまけたのが発祥だと聞かされた。(当然、捨てた当人には大人の事情で何も知らされていない)
 「配ったプリントはちゃんとおうちに持って帰りましょう!先生との約束だぞ!」
 それさえ言えない役員会に社外取締役が機能するとは思えないが、まぁ、下見りゃキリなしだわなぁ、とか。
 さすがに、大企業でそれはないと思うけど。(あ、紙媒体って会社も減ってると思うし、って意味が違うか・・・)