昨日のWBS

 やらないかと思っていたら触れていた明星の自主回収。
 ただ、健康被害はないはずやから安心してなー、という感じでさらっと終わらせているのは気のせいか気にしすぎなのか。
 確かにプレスリリースに納入業者の具体的な説明がないので踏み込む必要もないのだが、子会社の実質自社工場の不正だと捉えられてしまうのは明星としてもしゃくだと思うし。
 というか、製品の差異は法的許可があるかどうかという製品自体だけでは直接的にスペックアウトを見つけることは極端に困難である例だと思われるので。
 当の納入業者は非上場なので資本関係があり商品取引の契約関係以外で何らかの問題に対処する責めを明星が負っていたのかどうかは全くもって不明だが、なんとなくなさそう、という感覚的な感想から結論付けてもよさそうな気はしなくはない。(四季報の未上場会社版とか地元銀行やシンクタンクのレポートとか引っ掻き回せば出てくるのかもしれないが)
 そういった意味では、明星側にとってたとえリスクを想定することが可能であったとしても見抜くことがほぼ不可能な事案であったと思える、という気がする。
 とはいえ、以下同じということではあるが、事案は調査中であるため何がどうなのかは全く分からないし、今後も何も公開されないかも知れないが。
 あと、何となくきな臭いなぁ、と思うのは、一部報道で「保健所の刑事告発」があったとのことが触れられているのだが、私自身保健所内部の公的手続きがどうなっているのか具体的に熟知していないとはいえ、多くの場合、保健所が刑事告発するのは、よほど調査に対して悪質(例えば、保健所の立入検査には強制捜査権のような強い権力はないとかそういうレベルでの話)か、事案が大きい(いわゆる死者が出るとか何十人かが病院送りになるとか刑事事件になり得る要素を含むなど連携が必要とされるケースとか)場合に出てくるプロセスなので、どうなんだろう、という不安があってみたり。
 また、これも一部の報道にある、問題となったチャーシューは、本来適切に製造許可を取得していた自社工場の1つを改修するために緊急措置的に製造許可を取得していなかった別の工場で「数日間」製造したという説明がなされていたが、明星が4種67万個回収することとの数的ギャップが大きく感じるのと、回収対象が賞味期限ベースで最長来年1/27〜4/13(一平ちゃんしょうゆ味)と範囲が広いこと(大量発注して四半期程度で消費という可能性もあるだろうけど)がなんとなく不安にさせる。
 ただ、一部で今後はかやくぬきのカップ麺しか出なくなるぞ、とかオイルショックのトイレットペーパー並みの話をしている者もいたりはするが、だいたい国内の年間カップ麺製造数は50億食ぐらいと言われている(最近はもっと少ないんかな。どっかに統計資料とかありそうだけど)ので、他のメーカーが軒並み回収を後追いするレベルでないかぎりそこまで寡占が進んでいることはなかろうし、カップ麺自体の極端な信用不安に結びつくとは思えないかと。
 まぁ、数十年前なんぞ、袋麺工場のとなりの従業員もいないような個人工場(こうば、という方がしっくりくる)でスープの小袋を製造していたことを考えるとどうとでもなりそうな気はしなくはないのだが。(あ、大物のかやくは無理かなぁ)
 なんにせよ、何となくちぐはぐさがなきにしもあらずってように思えるが、思っちゃダメなのかもしれないからそうなっているということなのかも知れないので終わらせる。
 で、こういうことを書くと懐古趣味のボケ老人と言われかねないのだが、過去の系列と呼ばれていた時代では、教科書的にいうと統制が取れているので適切に最終製品が生まれるように適切に系列各社が稼動していた(させていた)ということなのだが、いいかえると、系列各社のうちどこかで問題が発生した場合には全体で弾力的に吸収していたということになろうし、またそれが起こらないような何らかの措置が会社という垣根を越えて取られていたとは思う。(確かにジャストインタイムなんてのを突き詰めるとその弾力性も効率化のために削ぎ落としてしまうので必ずしもそうだとも言い切れないが)
 とはいえ、効率化や経費圧縮などの名のもとに系列をばらばらにしていけば、メリットも多いかわりに最終製品に至る分業のある一部に発生するリスクを吸収させるべく設定可能な柔軟性の選択肢は減り、また逆に実際に発生した事故を吸収するのは多くの場合リスクの外部移転といったカテゴリに属する方法を取らざるを得ないというデメリット(金銭的対比としてマイナスになるかどうかではなく選択肢の不足という面で)がある。
 そして、過去にも書いたが、後工程は○○というところにおいて、○○にお客様といれたところで、自身において今売っぱらっちまえばOKなんでこれを満たす、と考えてしまうと、最終製品を中心にしてサプライチェーン(最近ではライフサイクルとして考えるべきとはいわれているが、ここでは一応回収の話なので)を考えた場合には、様々なモラルハザードの要因が認知可能になってくる。
 今回の事案でいえば、そもそも食品加工業者に技術が全くないわけもなく、取引業者に大手企業が頭を並べているところからして、どちらかといえば業界の中でも高度な技術を保有していたと思えるわけで、ひどい言い方をすれば、許可なく製造しても法令に違反はするが法の目的である『食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もつて国民の健康の保護を図る』ことを最終製品のスペックとして結果的に満たしてしまっているというへんてこな状況が起こりうる。
 また、淮南子のアリの穴から堤防が決壊するのが常に真であるとは誰も常識的にありえないと思うだろうが、残念ながら当事者レベルで些細なことだと扱ってしまったとしても、結果大きな問題に発展してしまうことがあるリスクを最終製品を想定して考える必要もあるのではないかと思われる。(今回の場合は、それ以前に法令に違反しているので本質的に考慮するまでもないが、人間工学的にいう気の緩みなどという領域としての歯止めとしては機能すると思われる)
 ただ、いずれにせよ、それらをどういう認知でもって意思、全体的意識、合意形成をし最終判断するかによって製品ではない別の問題を引き起こすということになろうと思う。
 また、先述のとおり、サプライチェーンとしてモラルハザードであっても当事者にとって認知できない(そもそもモラルハザード自体認知が難しいのも確かだが、それよりも低い次元として)、もしくは自らの行動、活動をサプライチェーンの1つとして受け止められない場合は、正しくない判断へのエラー訂正機能も働かず、結果的に事案化するという構造も考えられなくはない。
 で、情報が少ない中での全てが妄想なのでそれはそれとして、致し方ないとはいえ、系列などといった「もたれあい」と揶揄されていたころから変わって、小学校などでやっているようなバランス崩しゲーム(正式名称は知らない)とかいう自身の足を移動せずに相手と手のひらで押し合うような状態からどちらかもしくは双方がバランスを崩して後頭部から地面に叩きつけられてもそれは致し方ないわけだし、あるべき姿だとするにはなんというか悲しい気がする。
 一応、これもいつもの不祥事ネタにあたる、、、のか?