また橋

 イタリアの落橋事故で亡くなられた方々にご冥福をお祈りいたしますとともに、負傷された方々の一刻も早い回復を願っています。

 というわけで、不謹慎ながらも、大型の橋梁事故でいえば、最近(でもない?一応今年だけど)ミャンマーでもあったわけだけども、共用開始後それなりに経過した状態での事故というのは、以前記事にした建設時の事故とはまた違った問題があっていろいろ悲しくなる。
 およそ、私を含め、ニュースなどで事故そのものについて断片的に知る多くの者にとって、基本的に見える部分というのは、今落橋したということであって、その背景というのは実際非常に深く、また作れば作るほど維持管理するものが増えるだけあって、新規に建設中のものよりかは運用中のものの事故というのが結果的に多くなるだろうし、そういったものは、少なくとも時間断面での状況を含めるといった奥行きのバリエーションが増すことになる。
 さらにいうと、維持管理、補修(場合によっては、潰して新たに作ることも含む)といった建設以降のライフサイクルの領域に関して、地域、国独特の政策や政治、政府組織、運営形態、運営組織などの要因が大きくかつ全く異なっている部分よりも微妙に異なっている部分が多分多いため、国内にいて肌身に感じる知の蓄積から自ら構築している運営形態という認知で「予算がなかったから」という報道をどう理解するのかという部分は場合によってはかなり変わってきそうな気もする。
 確かに、カネが有り余るほど潤沢にあるならば、少しでも問題があるものはどんどん作り変えればいいわけだし、そもそも有り余っているなら全部飛行機で橋なんぞいらんやろ、というのもありな気はするので。(EUの政策については考えないとして)
 ひどい話、カネで実現できないことはあるよ、というのは、カネで実現した後に残ったものがそれであるというだけのこととも言えるが、その領域になると非現実的であまり建設的であるとは言えない。

 で、見なければならない範囲を精一杯広げた上で、ミャンマーの話(マレー語なんか読めないんだけど、カタカナ表記するとミャウンミャ橋と読むらしい)の大きな要因は、検査はしてたけど、技術的に検査しなきゃいけない箇所でしてないところがあった、ことによるらしい。
 検査しなきゃいけないことになってたけどしてませんでした、という先日書いた検査不正とはある意味逆で、多分、ミャンマー国内で同様の問題がないか水平展開されるはずだろうけども、本質的には、数十年もの間、検査項目が技術的にもしくは諸外国の検査に関する先進的な事例などを用いてレビューし、更新されることがなかったのか、を探る必要はあるのだと思う。
 それは、技術移転を受けたことによる受け身であるからだと国内においては考えられがち(海外経験のない技術者の中でもそう決めてかかる人もいたけど)だが、個人的には、個への移転から社会的システムの一部になる形への移転へ、そして移転から定着、自発的な更改、向上といった形にならなければ、様々な要素が絡んでいるはずの高度なレベルに一足飛びに底上げしただけなら、どこかにひずみが生じているというリスクを考慮しなければならないのではないか、と思える。
 実のところ、対岸の火ではなくて、国内でもヒトというライフサイクルゆえに見事に滅失していっているケースもかなりあるけども、社会的無形資産だったものか、社会的とは呼べなくともゆるい個の連携による資産だったものが、ライフサイクルの環から滑り落ちているという意味ではあまり変わらない。
 と、個人的な周囲の特定の者(まぁ、見られることはないだろうし、見られたところで同程度のことを既に面と向かって言ってたりするのでいいってことで)を想定した愚痴はいいとして。
 あと、なんだろう、個人的には、経済的な意味合いだけでなく技術的な経験という意味で、現地の者を雇う、という意識が、短期的ではない双方のメリットとして、それなりに上の方で醸成されてほしいなぁ、とか思ったりはするけど、言っても詮無いことなのでやめる。

 で、ジェノバの件。
 英語が読めないのにイタリア語ができるわけもなく、何がダメだったのかを拾い読みすることもできないんだけども。
 それにしてもすごいのは、気が付けばWikiができてることかと。
 個人的には、事故のニュースが流れた時に若干郊外っぽいところの河川沿いに軌道が複数走っているなんてところはジェノバに関しては地形的に多くないと思っていたので、ググって見つけたけども。
 でもって、個人的に、かつしろうと目に驚いたのは、塔がほぼ原形を留めていなくて橋脚の下の方の一部しか残っていないことだった。
 Google Mapで塔の下から見上げることが可能なのだが、どうなったらそうなるのか想像がつかない。
 老朽化で簡単に話がつく問題じゃない気がするんだが、実際はどうなんだろう。
 Wikiによると、橋梁の構造はPC橋になっていて、特段斜張橋とも書かれてはいないので上側は飾りなんてこともあるかもしれないけど(一応、世の中には斜張橋っぽいけど構造的に意味がなく意匠的にしか意味がないのもあったりはする)、積み木じゃないし、という。
 AFPの翻訳記事に『深刻な腐食』とあるけど、具体的にどこの何という部材かは書かれてないので分からんし。
 斜張橋かどうかは分からんが、斜材が構造的なものだとして、それが腐食するのは先のミャンマーの橋梁でも同様に永久に検査不要、取替え不要なわけではないのは半ば当たり前のことだし。
 あと、補修工事がどのようになされていたかとかそういった情報は日本語圏じゃないだけにこれまた全く分からないのだが、塔や橋脚の補強を行っている(国内の例でいえば、阪神淡路の阪神高速倒壊を教訓に鋼板巻き立て補強をしたみたいなイメージ)ような雰囲気がなさそう(例えば足場やらクラック調査がされているような写真がググっても出てこない)なのから考えると、逆にそこは問題視されていないか、もしくは危険度として低かったのかと思えるし。
 先のGoogle Mapで見た感じでは、いや、これ明らかにコンクリ死んでるでしょ、みたいな外観ではないところからして、ある程度は補修した後なのかもしれないけど。
 ただ、これも国内の補修の流儀が他国と全く同じかというとそうでもないところからして、想像の前提が適切かどうかさえ不明なんだけども。
 とにかくよく分からんので、せっかくなので、ドラレコ映像さえ出ないところからして何か統制されてんのかなぁ、とか陰謀論を考えてみたり。
 一応、空港側(斜長橋の逆側)を落橋地点に向かって走っていてすんでのところで助かった海外旅行者のインタビューだと、車が右に傾いたあと、前方の車がいっせいに止まり、バックを始めた、というところからすると、落橋まである程度時間があったとみるべきか、落橋しているから他の箇所も崩落する可能性があると思って引き返そうとしたのか、とか考えられなくもないんだけど、結局確定できるものは何もないという。
 後々情報出るのかなぁ・・・