コーヒーの新製品

 今日はキリンの新コーヒーのキャンペーンのために各地で配布イベントをやっていたわけだが。
 TV番組なんかでも取り上げられていたため、混むんじゃないかと思って行くのをやめてしまった。
 その昔、コミケにずっと行っておきながらいうのも何だが、混雑しているの嫌だし。
 あと、天気もよくなさそうなのもあったといえばあったかな。(前日の予報だとそうでもなくなっていたのだが)
 いずれにせよ、行く行かないの決定時には自転車で往復2時間もかけて行くにはリスクの高い選択だったわけで。

 で、当のキャンペーンは少し前に知っていて、具体的にどういうやり方をするのか興味があったので行ってみようかな、ぐらいな気持ちだったのだが、プレスリリースがあった日にWBSで映像が出ちゃったので、まぁ、いいかなと。
 要は、一般的な試供品の街頭での配布(街頭サンプリング)をイメージしたキャンペーンガールで目立たせて商品認知度(どちらかと言えば商品名の認知度)を上げるために配布するようなものではない、という話だったからである。
 キリンのプレスリリースにもあるように、『無料で試飲缶を提供できる自動販売機を設置する期間限定サンプリングイベント』ということのよう。
 実際、街頭サンプリングを無人化する手法として、自販機を用いたり、壁面広告に貼り付けたものを持ち帰ってもらうタイプなど様々なものがあるわけだが、食品など配布ターゲットが広く、それゆえさっさと配布しきれるものではない場合に使われているように感じる。
 ただ、今回のは、なにしろ2日間限定で『イベント』という内容でありながら、どんな配布方法を取ってくるんだろうと思っていたわけである。
 が、9/14の渋谷ヒカリエ(渋谷のあっち側は行ったことがないのでどんなところか分からないが)の映像を見る限りでは、普通の自販機を設置して並ばせてお持ち帰りさせるといった形で、スタッフが周囲に常駐している以外は、特に真新しいことをやっているような感じではなかったように感じられた。
 また、サンプリングイベントが土日の昼(リリースを見ると午前11時)からということも見逃せない点だった。
 基本的に、缶コーヒーのメインターゲットは30、40台男性で、かつ朝の出勤時を狙うことが多いためである。
 しかしながら、WBSでインタビューを見ていると社長は『勝負する味を知ってもらいたい』、イベント参加者は「のみやすい」「コクがある」とか結局非常に一般的な味の話になってしまっていて、大掛かりな割には思った以上に方向性が読めなかったりする。

 さて、WBSの特集内で提示されたグラフでコーヒー消費量は年々漸増傾向にあるが、缶コーヒーは横ばいであることが説明されていた。
 が、漸増といっても原点が0でないため、それなりに作為的といえば作為的で、増加率でいえば爆発的な伸びが云々という程でもない。
 また、2007年あたりで一時国内のコーヒー消費量はピークアウトしてしまったと当時言われていた(単に当時の原油価格高騰のあおりを受けた食料品価格の上昇に起因しているかも知れないが)ことを考えれば、カウンターカフェで盛り返してきた、と言った方が適切なのかもしれない。
 いずれにせよ、2013年のセブンカフェの社会現象ともいうべき人気があっても劇的な数値として表れないのは、それだけ先人たちが国内消費のための様々な場面でコーヒーを用いる努力をしてきたことが大きいかもしれない。(それでも他の先進国に比べれば一人当たりのコーヒー消費量はかなり少ない方だが)
 とはいえ、カウンターカフェの影響で供給元が生産設備を増強したり在庫を多めに抱えるようになった(実際、全日本コーヒー協会の資料でも2013年から在庫が増えている)のは、少し恐ろしく感じはするが、それはそれとして。
 多分、そういった細かい部分は、政府の消費実態調査を分析すれば分かると思うが、集計するのも面倒なので、とりあえず、どういう形態でコーヒーが消費されたかを簡単に見て分かる全日本コーヒー協会が公開している資料にあたってみる。
 で、そこには2014年までしか資料がないため、セブンカフェなどのカウンターカフェの影響がどこの数値に現れているのかこれまたよく分からなかったりする。
 コーヒーの種類別として、インスタント、レギュラー、リキッド、缶となっているが、カウンターカフェがどれにあたるのか(多分レギュラーっぽいが)とか、飲用場所として家庭、喫茶店・コーヒーショップ、レストラン・ファストフード、職場・学校、その他とあるが、カウンターカフェがどれにあたるのか(持ち帰りが多いと考えると家庭か職場・学校になるのか?)が数値からあまり見えては来ない。
 セブンカフェが有名になり、ヒット商品番付に載ったころ(多分2013年末あたりかと)に何かの特集で、
 ・カウンターカフェが人気になったが、缶コーヒーの消費は変わっていない(これはWBSのグラフと同じ傾向かと)
 ・カウンターカフェの販売は朝が多く、出社前需要を取り込んだ形となる
 ・コンビニのカウンターカフェにおける利用者の男女比は、コンビニの利用者のそれよりも女性の比率が高く、コンビニとして女性のついで買いという需要を取り込んだ形となる
というようなことを書いてあった気がしたのだが、すでに初出が何だったのか全く思い出せない。
 で、これとは別に、統計的な数字があるわけではないが、昔から
 ・缶コーヒーは朝に多く売れる
 ・缶コーヒーのユーザーは男性比率が高い(私は7:3と教えられたが実際どうなのかは調べてない。)
 ・コーヒーの飲用数が格段に多い者(ヘビーユーザー)は缶コーヒーの飲用比率が高い
といわれることから考えると、カウンターカフェと缶コーヒーは競合してそうでいて、数字には表れてはいない、ということだろうと考えることができる。
 その原因を想定すると、
 ・缶コーヒーメーカーの企業努力で持ちこたえている
 ・コーヒーのヘビーユーザーが支えている
 ・思った以上にカウンターカフェが缶コーヒーユーザーの男性を食っていない
 ・カウンターカフェが食った出社前需要は缶コーヒーからではなく喫茶店などの飲食業からだった
 ・単にカウンターカフェのユーザーはこれまでコーヒーを消費しない新規ユーザーだった
などが考え付く。
 裏返せば、缶コーヒーメーカーがとりうべき手法としては、
 ・もっと企業努力をする(コーヒーそのものの味、バリエーション、付加価値など)
 ・ヘビーユーザーにもっと飲ませる
 ・カウンターカフェが食っていない男性ユーザーを何らかの形で死守する
 ・カウンターカフェと戦わず、他の競合のユーザーを食うことで維持する
 ・カウンターカフェが開拓した新規ユーザーからおこぼれをもらう
ぐらいだろうか。
 で、これらのうち、商品開発に大きく関わってきそうなのは、上の2つだろうと思われる。
 それから下は参照することはあっても、そこから商品開発することはかなり難しく、また販売方法などの影響が大きそう、ともいえる。
 横道に反れるが、カウンターカフェなどの流行とは別に、全日本コーヒー協会の資料によると飲用場所として家庭(いわゆる宅飲み、家飲み)が順調に増えていることからすると、この領域においては持ち帰りができない販売方式(そんなのがあるのかどうか分からないが)以外はすべて競合する割には、有望な成長市場と捉えることもできなくはない。
 差別化としては、缶コーヒーでなくてはならないライフスタイルの提供とでもいうべきだろうか。
 こういったものも先の付加価値の部分に含まれるだろう。

 長々といつもどおり前置きをしたが、今回のサンプリングを行う商品の開発コンセプトはプレスリリースによると『コーヒーの国内消費量は、ここ数年で大きく伸長しており、お客様は缶コーヒーだけでなく、コンビニエンスストアのカウンターコーヒーやショップコーヒーなど様々なコーヒーを楽しんでいます。このような環境の中、缶コーヒーの飲用者が持つ現在の缶コーヒーへの“潜在的な不満”を“コーヒー感の不足”と捉え、味覚にこだわった商品開発を行いました。』とのことである。
 簡単に言うと、味に関してもっと企業努力をするという選択ということになる。
 先に自販機を用いたイベントというのを聞いていたので、もしかして、缶コーヒーとしての新たなライフスタイルを提案することを追体験させるために、「自販機で買う」という行動の基点を設ける行動制限をユーザーに強いるためにやっているのかなぁ、などと考えたりしたのだが、そういうわけでもなさそう、という感じで考えすぎだったようだ。
 また、『缶コーヒーの飲用者が持つ』という部分からするに新しいユーザーの取り込みを想定しているわけでもなさそうだし、いわゆる無意識に選択肢から缶コーヒーがもれるといった『潜在的な不満』をどうにかしようということは、ヘビーユーザーへの訴求ではないことになると思われる。
 さらに、前段にあるように『カウンターコーヒーやショップコーヒー』「も」利用してしまった『缶コーヒーの飲用者』がもつ『潜在的な不満』というより「相対的な不満」を埋めるための味の改善であるなら、もはや缶である構造的製造工程の関係から限界にきているのではないのか?と感じなくはない。
 個人的には、カウンターコーヒーをそのまま飲んだ場合と、空き缶に入れかえて飲んだ場合となら、同一物であったとしても缶という構造や材質から違った味として認知されるため、意味があるんだろうかとか思ったりする口なので、まぁ、ある意味貧乏舌が語れる立場にはないともいえる。
 しかしながら、一時やっていたビールやコーラの新商品発売に際して、他社製品とのブラインドテストを体験してもらうという日本的に見れば非常に攻めた手法が取られたことがあったが、貧乏舌でさえ、カウンターコーヒーと缶コーヒーを並べられて、確実に缶コーヒーの方がうまいと言わしめる自信でもってキャンペーンを行えるかのというと、多分、それはない、ということなのかもしれない。
 というか、貧乏舌からすると『コーヒー感』ってなんやねん!!とつっこみを入れたくなる話で、多分、イメージ力が貧困だというよりは、原因はどうあれその差異が認知できないということなのではなかろうか、とか思ったりした。

 あと、ツイッターやインスタグラムを用いた『サンプリング缶を飲んでうまいかどうか、みんなでジャッジ!』というプレゼントキャンペーンを行っているのだが、そもそも10/4に発売されてしまうわけで、TVCFなんか作成済だろうし、製罐メーカーは既に作成済だろうし、そもそも製品の製造自体、サンプル缶を製造した時点で同時に終わっている可能性もなくはないわけで、うまいかどうかというより、ここがもっとよければ、という意見を商品にフィードバックさせることは無理だろう。
 工業製品の悲しい性といえばそういうことになるかもしれない。



 ということで、どっちにしても来月に発売されるので、どっかこっかで手に入れられるだろうということで先延ばしにして終わる。