入札制度とかについて

 豊洲新市場の件に噛み付いてしまったので追加してみる。
 正確性としてどうなのかと思われるためリンクは張らないが、とりあえず引用してみる。

 まず『主要建物3棟の建設工事で、1回目の入札不調』。
 国土交通省が原則2回だし、複数回入札することが多いことを考えると、「???」と思う人もいたみたい(再入札がある場合、1回目で不調になるのは、全社辞退とか特殊なケースに限られる。指名競争でないとまた条件は変わるが。)だが、東京都は入札は1回のみ。
 再入札は存在しない。
 地方公共団体は、電子入札になる前は際限なくやってたり、原則3回で保留なんてのもあったりした。(ヒアリング後に日を変えて再入札とか)
 予定価格が公表されていない場合で、入札回数に際限がないと、入札業者がチキンレースを始めてしまう(要は他社が何万円切ってくると思うのでうちは+何万切ろうとかいうヤフオクの入札金額の設定とかと似てなくはない)と手持ちの入札書が足りなくなったりするのもある意味風物詩だった。(私はその経験はないが。)
 いずれにせよ、東京都がそういった方式を取る理由は知らないが、まぁ、勝手に想像するしかない。

 次。
 『1回目の入札不調後、都当局が入札予定の大手ゼネコン側にヒアリングを行い、積算を事実上聞いていた』。
 これを問題視する向きもあるが、品確法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)の第七条二に示される『入札に付しても定められた予定価格に起因して入札者又は落札者がなかったと認める場合において更に入札に付するときその他必要があると認めるときは、当該入札に参加する者から当該入札に係る工事の全部又は一部の見積書を徴することその他の方法により積算を行うことにより、適正な予定価格を定め、できる限り速やかに契約を締結するよう努めること。』のとおりなので、適正な行為である。
 ただし、このプロセスに至らしめんがために資材価格の高騰以前から東京都において不調が多いと邪推する向きもないわけではない。
 ただ、真実は別にして、あくまでも強引な邪推ではある。

 『その後の再入札で3棟工事の予定価格が計407億円増額され、いずれも予定価格の99%超で落札された。』。
 私自身、関東の地方自治体の入札関連をいじったことがないので知らなかったのだが、調べてみると、金額の札を入れた後、落札候補者が決定しても、かなり綿密に落札候補者の見積書を精査するらしい。
 要は都の予定価格の積算と落札候補者の積算がほぼ一致していなければ、品質確保の観点から落札者になり得ないことを考えれば、都が厳密に精査すればするほど予定価格に入札額が張り付くのは当然であると思われる。
 およそ見積書の精査を厳しくすれば、発注者が求める作業工数で目的の構造物なりができあがり、それが品質の基準であると入札者は想定するため、予定価格に入札額が張り付く見積書を作成することが発注者の求める要件を満たす(品質が確保される)とも考えることができるからだ。
 しかしながら、予定価格を公表した上で発注者が求める作業工数で目的の構造物なりを作れ、とするならば、見積金額は同値もしくはほぼ一致した数値にならざるを得ない。
 要は価格競争を行う意味がないことになる。
 こういった観点から、プロポーザル方式や総合評価落札方式などが導入されたり、見積書の精査の基準をある程度幅を持たせる、例えば紙入札の時代では、低入札の場合のみ精査するとか内訳の抜けがないかのみチェックするなどの手法を取っている自治体もあったりした。
 で、結局のところ、こういった手法を悪用すれば、例えば談合などで受注調整したのかどうかが書類上判断できないということに問題があるといえるだろう。
 ただ、これは判別できないことが問題なのであって、あくまで問題行動、ひいては違法行為などが行われたかどうかという問題ではない。

 で、多分もっとも法的に問題があるのは『受注ゼネコン幹部は「再入札前に予定価格を引き上げるから落札してほしいと都側からヒアリングとは別ルートで要請があり受け入れた、と社内で説明を受けた」とも証言した。都幹部はこうした要請を否定している。』だろう。
 いくらなんでも、そりゃ否定するわ。
 まぁ、それはそれとして、いずれにせよ、こういった案件は、結局言った言わないという話になるため、基本的にこじれてしまうより先に誰かが人身御供としてあっちにいってしまうことで幕引きが図られることになるような気がしてならない。
 基本的に、一般の私企業のように会社ぐるみかどうかという議論は公共団体には実質的結果的に存在しないため、しっぽが切れるより道がないという逆説的論理であるとも言える。
 中には、某副市長のように公取から改善措置を食らう者もいたりするが、ニュースになるぐらいなだけにまれだと思われる。
 で、それがいいかどうかは特に触れる気はないが、昔でも「お願いだから辞退しないで。不調になってしまうから」と指名業者の人に廊下とかで話し掛けただけで、すぱっとクビがすっ飛ぶ世界なので、もし過去形として言っ「た」とするなら、個人の問題ではなく、そういった個人が業務を執行し続けることが可能な組織全体としてのシステムに問題があることにはなるのだろう。
 まぁ、だからこそ、結局しっぽが切れるのだが。


 んー、正直どうこう言ってもどうしようもない領域なので静観するより他に手の施しようもないのだが、どうなのだろう。
 で、今年の漢字は「禍」かな、とか。
 「市に禍を買う」って言うし。
 本件に限らず、都合よく(悪く)自ら呼び寄せている事案が多すぎるからなぁ。