FAXネタ

 増田を眺めてて思うのは、定期的にFAXに親か子でも殺されたのではないかと疑わしき者がその感情の吐露を足跡として残していくことが見られるが、他のレガシーデバイスが別の新しいデバイスに移行していった状況とは、何がどうとは言い表せられないが、何となく違う気がして興味深い。
 個人的な立場はというと、過去にもFAXネタを書いたが、基本的にはXtoYという図式としてBを含む領域で利用されるもので、一方のみがBである場合相互に機会損失が発生するだけ(機能を満たすかどうかは無関係)であり、双方がBの場合は、双方の経済原理から最適解なりを見つける/仮定し設定することで使い分ければいいだけだと思っているので、事物自体の要不要を考えるのは面倒臭いのでやりたくないという感じだろうか。
 そういった立場でいる関係上、「改善ポイント教えて」における増田は、実は具体的改善のポイントを教えて欲しいわけではなく、いわゆるはしごを外せばいずれ外した先には人も何もかも存在しなくなるというのではなく、はしごの先の人や事物をどうにかしてから外してくれ、ということを理解せしめんがための物言いなのではないかと勘ぐってしまいはする。
 というわけで、せっかくだし、ひねくれている性癖を利用して具体的改善のポイントを書いてみたい。
 まず、簡単な方法は適正なBPR関連のコンサルとかを入れる、ということに尽きる。
 実際に改善するには、A社、B社の当該作業内容だけから抽出できる解決策は少なく、およそFAXをなくす事を試行し、結果的に『FAXに戻った』ということを考えると、単純な問題として解決できるものではない、と推測できる。
 また、先述のとおりFAXというデバイス自体が製造、メンテなどにおいて廃止されるといった制約条件でもない限り、増田の言う『効率を考えた結果』であれば、それを覆してまで別の方法を模索することは経済的な意味で健全な企業活動とはいえないと思われるため、事物の要不要の対立とは別領域であろうかと思う。
 で、さらに細かく考えてみるとして、増田が提示するA社、B社がFAXをなくし効率化を図るための試行、シミュレーションをどのように設定したかは分からないので、いやいやそれをやろうとしたんだけどダメなんだよ、ということが多いかも知れないがとりあえず先に進む。
 まず、FAXをなくし効率化を図る範囲はどのようなものだったのだろうか。
 改善したいプロセスにおいてその関連性がA社とB社だけで完結してしまうのであれば、Mailなどの電子化やペーパーレス化といったそれなりな規模の業務プロセスの変更を伴うものではない様々な方法もなくはない。
 例えば、在庫発注等が極端なJITを求められず、数日程度の余裕がある場合は、宅配業者等のビジネス便サービスで固定あて先などに関する割引を受けるとかインテグレイテッドキャリアでもよく似たサービスはあったように思う。
 FAXの回数や送信枚数、その紙の業務システム内でのライフサイクルなどによってどちらが有益かは変わってくるので一意な解が定まるわけではないが、ゼロから業務プロセスやシステムを作り上げるわけではなく既存の稼動中なシステムが存在している以上、必ずしも電子化だけが効率的な解決手法というわけではなかったりはする。
 見た目、それこそFAXよりも前の手法に戻っているかのように感じるかとは思うが、効率性、コスト等から考えて選択すればいいというだけ、といえる。
 また、同様にA社がFAXをなくすことを目的としているのかB社がそうなのかによっても選択肢は変化すると思われる。
 範囲を設定するにあたり、A社←→B社間のFAXによる通信をやめることだけに限定することを目的とする場合も本来はあるわけだが、FAXの機械をなくすことを考えているはずなので、ここでは除外する。
 とはいえ、こういった目的の明確化とは別に、こんな感じになったらいいのに、といった想像するあるべき姿、だったらいいな的な姿は独立して描いてしまうと思うし、その幻想に引きずられてしまうこともなくはない。
 数十年程度からそうだが、こと電子化を用いた業務プロセスの変革は、その見栄えの変化が大きくことなることもあり、マスコミなどが取り上げやすく、結果としてそういったステレオタイプ的な方向性の姿を思い描いてしまうことも多い。
 そういった表面的なことだけにかぶれた経営陣がいたりすると下は結構大変だったりするのだが、それはそれとして、およそ、こういった者たちや期せずして引きずられてしまった者は、増田が例示した商品の受発注のプロセスにおいて用いられている紙を全て電子化された状態で流通し完結することを想像してしまうことが多いように経験上思う。
 しかしながら、先述のとおり既存のシステムをごっそり別のものに載せかえることは、既存のインフラなどの制約などから効率性が阻害されたり、少なくともFAX1台どうこうする以前にカネがかかりすぎるという問題がある。
 およそ、先の範囲に対してすべてを作り変えることはそういった点で企業活動としては現実的ではないわけで、範囲の中のどのプロセス(不連続なサブプロセスのこともある)を前後の工程に親和性を保ちながら効果的かつ効率的な代替プロセスを導入することが可能か、というように考えなければ、よほど既存システムにもとからムダが満載されてない限り難しいと思われる。
 例えば、A社→B社のFAX部分のみを別のものに置き換えるような事例として適切かどうか分からないが、営業所、ロジ拠点、工場の関係会社同士をVLANでつないで複合機を介してコピーを取る要領で相手の会社の複合機に出力する(単にコピーの排出口が無茶苦茶はなれているだけ、というイメージ)なんて方法で解決していた現場も見たことはある。
 こういった方法は、業務改善はペーパーレスではなくレスペーパーでなければならない、などと喧伝していた時代よりもさらに多様性をもたらす手法(増田の事例に適用した場合、レスペーパーにさえなっていない)として挙げられるが、このようにFAXではなくMailでやりたい、それ以外はダメという何らかの制約条件が存在するのでなければ、FAX以外の選択肢は数多く存在するのではないかと思われる。
 そして、それらをもって比較した上でFAXに優位性があるならば、FAXを使うことの方に正当性が認められると思う。
 加えて、この程度の内容はちまたの本屋などで売られている数多くのノウハウ本の方がもっと丁寧にかつ分かりやすく書かれているようにも思う。



 で、それはそうと、入社してすぐにFAXを使う業務命令が出されたわけもなく、単にFAXを見つけて自社を小バカにするのは、会社見学や事業所見学すらせずにその会社を選び入社したんかなぁ、さらには、その企業の業務プロセスにおいて、なぜFAXが必要かを考察もできない属性を持つのは、さすがに当該企業において適切な人材選抜ができていないんじゃないだろうか、などと心配になったりしたが、多分、釣りなんだろうと思うのでスルーした、とスルー力が足りないのでここで書いてしまったり。