関係なかったのか?

 「「甘党」菅官房長官、カールは「食べたことないんじゃないか」 (5/26 J-CASTニュース)」とのことで、今のゴシップ的状況が状況なだけに、『こういった「和み系」の質問に対応する余裕がなかった可能性もある。』と締めてはいるのだが、果たして、こっちに方が和みなんだろうか、という気がしてしまった。
 実のところ、明治(旧明治製菓)が具体的にその販売形態に至った内部事情(原則的に開示できない金銭的、組織的、戦略的な部分を含む)が開示されたわけでも、取材したわけでもないので分からないといえば分かりえないわけだが、少なくともしろうとの私でも経済的な問題点として2つ挙げることができると思う。
 1つめは、なぜ最も大きい消費地を捨てるのか、その選択肢しかなかったのか、という問題。
 採算の問題や売上低迷、原料高などが言われるが、政策につなげられるとすれば、ある意味かなり露骨なインフレ誘導をしておきながら、国内食品関連の屈指の大企業の看板商品の1つさえ、値上げという選択肢がなかなか取れないのは現状の政策として正しいあり方なのか?という部分があろうかと思う。
 東日本で終売になることとインフレ誘導の政策を横並びにして考えるのは早計かも知れないが、単純な構図として考えれば、インフレ誘導で消費者にとって買っていた商品の値段が上がるのはさいふに優しくないという意味では基本的にありがたいことではないが、そうではなくて買えなくなる、ということの方がもっと消費者にとってはよくないことであろうと思われる。
 結局、インフレをもたらす経済循環がゆっくりでも適切に歯車が回っているのであればそれはそれでいいのだろうが、一部に負荷がかかり過ぎて歯が欠けたということであれば、問題なのでは?という気がする。
 また、同時に某無法地帯と呼ばれる原初的な価格調整機能を持つ領域で突沸的高騰が見られたりするのも、経済政策が何を求めていて何をデメリットとして受容しろと言いたいのか、という部分について認知するきっかけとなるものではないかと思ったりする。
 2つめ。
 そもそもなぜ西日本は終売にしないのか?という点。
 いわゆる商品の地域限定販売などといったスポット商品などの場合と同じなんだから小ロット生産だとしょうがないだろ、というのは確かに生産管理の点からすればもっともらしい話ではあろうと思う。
 とはいえ、政策や経済環境としての卑近な問題点とからめるとすれば、流通の問題に繋げることも可能かと思う。
 本質的に理屈は通ってはいないのだが、茨城県で製造した菓子が四国で売られているような実態からすれば、カールの製造を愛媛県のみに移管集約したところで全国にばら撒けるでしょ、というのはこれまでの運輸インフラの成果をみれば「うん、うん」と頷いてしまいたくなるかもしれない。
 この砂上の空論から持っていくことができるのは、昨今の労働問題(残業問題など)や人口問題(エリア的に限りなく広く薄い消費)等様々な要因が運輸インフラを蝕んでいることにつなげてしまうことも可能かとは思う。
 結局、スポット商品のように他の定番商品と抱き合わせで販売チャネルにねじ込むのと違い、非常に多大なリソースを費やして確保したチャネルを自ら引き抜いてうっちゃってしまうことと比較検討できるレベルにまで先鋭化した状態で影響している、という方向性もあっていいと思う。
 その他にも、直近のトピック的ではない商慣行の問題とか独占禁止法における地域限定制限の扱い方とか人口集中問題とかいろいろあるが、多分数え上げればきりがない。
 で、当の記者は何が聞きたかったのかは会見自体を見ていないので分からないが、『食べたことないんじゃないか』という回答から単純に反転させて質問文を作るすると、「カールが東京で手に入らないようになって悲しんでいる人が多いですが、どう思われますか?」というようなざっくりしたものだったのかもしれない。
 例えば、
 A:昨日の○○○って番組面白かったんだけど、みた?
 B:いや、みてない。
で、会話が終わってしまうのと同じで、記者会見という場が先の会話にBがどんな話だったの?教えて教えて!といった方向性で会話を続けるという性格を持ち合わせていない以上、単なるティーブレイク的小ネタになってしまうところではあるようにも思った。

 あ、ちなみにメーカーの立場からすれば「和み」では少なからずないので、昨今の配慮病的考え方から、配慮していいんじゃないかと発言することにする。
 カールをここ数年買ったことはあっても食ったことがないヤツが言える立場にはないのだが。