本質とは

 一部で話題になっている「本質を見逃さないように」する記事でのたとえ話。
 有料記事であるにもかかわらず、ほんの一部での話題性から『表現に誤りがあり、当該箇所を削除しました。』と訂正されていたりするし。
 とはいえ、根本的に「本質」という意味では、『表現の誤り』だとすると、記事の主旨から言って該当箇所の「本質」が適切に表現されるべき、もしくは表現可能であろうし、『当該箇所を削除』するのであれば、本質を見逃さないための示唆を含む記事でありながら本質を見失っていたことを体現したことになりかねず、該当箇所を削除しただけでは説得力に欠ける気はする。
 まぁ、修正前を読まずに修正後だけ読むと問題はないはずなので、「編集」という領域からすればそれはそれでいいのだろうけども。

 で、とりあえず、いつものパターンで1/10の確率で故障する事象に関して1になる状況を再現できるかどうか考えてみたけども、まぁ、バカなのと暑いのとで何もよさげな言い訳が思い浮かばない。
 Web上では正しい計算式が既に公開されていて、算数的な話としては終わっているのでそれはそれとして、結局、教師経験が豊富で教授職に就いていながら、『電化製品関係の仕事をされている方』の話から飛躍して、確率が1を超える状態を自ら眼前にぶら下げていながら気付かない状況に陥るのか、というところが、実のところ「本質」を見逃してしまっている実例な気はする。
 先の故障率という観点からするとどれかこれかが壊れているのは0.65程度なわけで、全体の故障率が0.1であるものと比較すれば、格段に故障しやすいと考えていいように思える。
 また、そういった比較というのは、多かれ少なかれ体感的に(数学が得意な者は体感ではなく数値や図などが先に出てしまうらしいが)認識し得るものでもあろうし、それゆえ、先の『電化製品関係の仕事をされている方』が特にたばかったわけでも何でもない。
 単純な確率論という領域で『電化製品関係の仕事をされている方』が持っていた「本質」を筆者が取得することができなかったというだけである。

 さて、「本質」なんてのは、当然1つではないし、数多くのことばを紡いでいて、たとえそれが装飾語句であろうと汲み取ることが可能な要素が、とある観点において「本質」たるならば、一般的に複数あると考えていいように思われる。
 ここで、『機能が付く分故障しやすい、修理代がかかる』という発言に対して、例えば、高機能、高価格の商品であれば、各部品の故障率も低いものが用いられている(もしくは部品点数を減らすとか)んじゃないだろうか?とか考えるのは、多分、命題化したした際に初めて考慮するものであって、コミュニケーションのレベルでは、単純化し概算すればおおむね正しいんだろうな、ということが「本質」なんだろうと思う。
 とはいえ、さらに、そのコミュニケーションが商談における駆け引きであるとかなんとかという双方の置かれた状況やらそれらの場合分けを始めると、どんどん発散するが。
 また、そもそも数学に人生を捧げたような者がなぜ勘違いを犯してしまうのか?という点において、当人の心理状態というのもまた挙げられる「本質」なのだと思われる。
 例えば、簡単な話として、200円より198円が安く感じるというのは、果たして数字的な意味での2円差なのか心理的な要因が上乗せされているのかどうか、とか、為替や株価の心理的節目なんかと似ているかも知れない。
 また、記事の著者が、ストーリーテラーとして先に仕込んでいるといった構成を行った場合は、読者が間違いや見当違いに気付くことも「本質」であって、今回の記事に関しては、いささか不用意感は否めないものの、多くの者の目に触れるという意味では、導入として成功しているようにも思える。
 ただ、はたして、どこなへんを対象にした文章なのかは分からないので、適切かどうか、より適切なものが他に選択できなかったのかというのはあるのだろうけども。

 あと、個人的には、啓発用に本質を見抜くとかなんちゃらみたいな用いられ方をする「本質」というシロモノに関しては、かなり身構えてしまうというか。
 というのも、およそ、その「本質」が取得できれば成功する、みたいな書きぶりのとある領域の書籍などが多いように、「本質」は多くの者にとって取得できないものであって、取得できる者は他を抜きん出るということからすると、もはや結果として成功せず、取得できている実感もないことからすれば、自身の認知は常に「本質」ではないんだろうな、とか思っていたりするので。
 逆が真かどうかは分からないけども。

 なんだろ。
 結局、『表現』の問題として当該箇所を削るとかどうのというより、最後に「な〜んてね、びっくりした?」と付け加えただけで、読者に『本質を見抜く目を持つ重要性を再認識』してもらう目的としては機能するんじゃないかなぁ、とか思った。
 そういった構造が許されるのか、ふさわしいのかどうかは分からないけど。




 な〜んてね、びっくりした?