綱2

 よりにもよって何で「2」を書く羽目になっているのか分からないが、はごろもフーズが異物混入でちょっといろいろありそうな予感がする。(前回は原料調達の話だった。)
 報道は10/27時点で日テレ系しかされていない(10/28ではNHKなどでも放送されたようだ)ようだが、会社のHPにはPDFで『お詫びとお知らせ』というファイルが上がっている。

 で、まず前提としての話だが、もっぱら話題になる「回収」という事案は、ほとんどといっていいぐらい「自主回収」と銘打たれているとおり、法令に違反したから云々というわけではない。(厳密には保健所の指導という形で自主回収を行う場合もあるので全く影響されないというわけではない。)
 食品衛生法JAS法などに違反して回収(収去)の指示が出されることは企業の息の根を止めかねないため、近年ではまれなことだろうと思われる。(零細とかでは食中毒や収穫物の取り違えなどで結構ありそうだが、一応そういうのは省く。)
 で、大雑把な法令違反のイメージとして、行政が商品の内容物や製造工場などを検査した結果、到底商品としての規格を満足しないものしか製造できないとかほぼすべてのロットに対して明らかに健康を損ねる危険性があるとか重篤健康被害が発生した場合、これとは別に原材料などの表示違反や表記に関する違反の場合ぐらいだと法令違反、という感じだと思われる。(具体的には各種法令を参照。)
 結局、2mm程度のプラスチック片が混入した可能性があるとかいって回収しているのは、予見されるかされないかなど区別なく、様々な要因を企業側が考慮し判断して回収していると考えていいと思われる。
 そして、その行為は法令に基づき行っているというよりは、消費者のみならず、他のステークホルダから要請される事項であるといえるだろう。
 というわけで、法令から判断するならば、今回の虫混入の件も継続性がない(と企業が判断する/した)こと、および現在のところ重篤健康被害が認められないことからすれば今のところは法令違反ではない。
 とはいえ、法令違反ではない自主回収というものは、悪い言い方をすれば、法令違反ではないからといって周囲に大きく出ても企業にとっていいことなどなく(語弊はなくはない)、逆にデメリットが大きいことを考えたうえで行動を選択している、と捉えることもできる。
 ここでのある意味ちょっとした選択をどちらにするのかによって、企業としての行動が消費者にとって真逆に映るというだけ、という気もしなくはない。

 そういった意味で、失敗してるなぁ、と感じるのは、自主回収しないという表面的な部分とは別に、先の『お詫びとお知らせ』にある『「食品企業の事故対応マニュアル作成のための手引き」に準じて対応を行い』というくだりで、うーん、となってしまった。
 そもそも、手引きに準じるということは自社としてのマニュアルが作成されてないの?というところから、いやいや、法令違反じゃないことを意図的に暗喩したいから業界団体が作成した参考書を明示的に引き合いに出してんじゃないの?てなところまで邪推されかねない。
 あと、多分コピペなんだろうが、異物が混入していた商品が1年以上前に製造したものであるにもかかわらず、『当該工場に対し、整理整頓、清掃の徹底に加え、防虫対策、専門業者による消毒の徹底を指示し、既に実施しております。』というのは、いつの話なんだ?となりかねない。
 日持ちしない商品であればこの文面のままで意味を成すのであろうが、こういう事象においてそのまま使われてしまうと何となく悲しくなってくる。

 で、まぁ、それはそれとして。
 昔の人間なので、何というかある意味どうでもいいと思ってしまう口ではあるのだが、それなりに非衛生的だった時代からすれば、缶詰は巻締め(ふたをする)してから加熱処理するため熱処理しても残存する毒性のある物質が含まれていないかぎり相対的に安全だったといえる。
 ちなみに有名なシュールストレミングは熱処理していないので発酵してぱんぱんに膨らんでくるのだが、日本で流通する缶詰は大抵熱処理していると思う。(熱処理していないのが存在するかどうか実は知らないし、それを明記しているのを見たことがない。)
 そういった意味で、非常に重宝したものではあるのだが、現在ではその相対的優位性がなくなってきて、別の付加価値が求められる状態であるにもかかわらず、私のような年寄りのイメージと同様な、まだマシやからええか、で済むと認識してしまうような意識とのギャップが存在しているのかなぁ、などと考えさせられた。

 何が大事ってブランドはすごく大事だと思う。
 他のブランドはカネを積み上げれば手に入れられないこともないが、自らが作り上げておとしめたブランドはその元の状態をカネでは簡単に買えないので。
 最近そういう部分に捨て身で突っ込んでくる企業が多い気がするんだが、何なのだろう、とか思ってしまう。
 もう少し、大事にしてもいいんじゃないかなぁ。



 で、10/28現在でいうと、新たに『お詫びとお知らせ②』が掲載された。
 内容は、各所から回収云々という声が上がっているのとは違い、製造した協力会社の工場(興津食品、缶記載のOKTは多分その略(おきつ)だと思われる)での製造を休止するとのこと。
 操業休止でもなく、実質的にOEMであるため、その取引を停止しただけと見た方がよいかと思われる。
 なんだろう。
 食品商社っぽい振る舞いで、自らが食品製造メーカーとして認知されていることを忘れてしまっているっぽいのだがいいのかそれで、とか。
 まぁ、こういうのは内部統制の領域なので他人ごとだが。
 あと、どうでもいいことなのだが、その2のPDFは10/27のPDFと違ってコピペできないように制限をかけてきている。
 多分検索避けとか個人のコピペ避けなんだろうけど、あさっての方向にいろいろと手の込んだことをしてくるなぁ、と改めて感心する。
 なんとなく、その2が出たことによって個人的には商品云々ではなく企業の体質に対してかなりネガティブに振れてしまったかなぁ。
 その2のPDFにある『発生事実を真摯に受け止め』ることは確かに重要なのだが、自らが食という人に必要不可欠で崇高な行為の1つにおいて、その一翼を担う商品を取り扱っていることに真摯であらねば、同様の事故は繰り返されるというのが、リスクマネジメントなどにおいて再三指摘される事項である。
 そういったことは、このような事例に対して時間が証明していってくれるのだろうと思う。
 どうでもいいんだけどね。
 食べてないし。