エクストリーム

 増田ネタ。
 追記部分も読んだ上での後出しだが、「今の学校にいることを後悔しています。」について書いてみる。
 『販売している商品のうちの1つが「カビが生えている」と注意をいただきました。』という部分の注意をした主体が購入していただいた、もしくは購入しようとしていたお客さまからであるという前提だが、少なくとも保健所が関わる案件なので、そのお客さまが保健所に連絡した場合は、当該学校(法人か事業所(販売していた学校、調理場)かは分からないが)に指導なりが入る関係上、それなりの法的な責めを負う立場の者は、何らかの形で対応を迫られることになるはずである。
 また、コメにもあるとおり、保健所に誰かが何らかの形で告発、通報した場合、同様に当該学校に調査が入る(立ち入りかどうかは時と場合と保健所の判断によるとは思われるが)はずである。
 少なくとも、調理師専門学校なり製菓関連の専門学校で製造責任を理解しない者が教育者として指導しているとは考えにくいが、必ずしも規定の能力を具備しているとは限らないのは世の常であろうし、あるいは、そこはそれ、タイトルにあるとおりエクストリームな行動を地でいっているのかもしれない。
 『退学すると高卒扱いになることを知ったので卒業までいようと思います。』とのことだが、相手がエクストリームなだけに先払いの学費だけ持って高飛びされるとそれはそれで退学するのと同様に高卒扱いだが、多分、就職時等で自主退学するよりは話のネタにできるぐらいのメリットがあると思うぐらい楽な気持ちでもいいかもしれない。(不安にさせてどうするよ・・・。えっと、現実には様々な公的、私的システムに基づきほとんどの場合救済(編入という形が多いらしい)されるらしいので。)

 さて、実質的な意味で本件に関して増田の取れる/取れた行動は限られているというかそもそも学校という管理化である以上、あったのかどうかすら怪しい。
 とはいえ、古いことばで言うところの花嫁修業などのただの教養という意味ではなく、製菓関連で口に糊するつもりであれば、保存云々以前にスイートポテトを5日前に製造しお客さまの口に入ることがどういったことかを体験的に知っておく必要があるのではないかと思う。
 およそスイートポテトは特殊な製法や特殊な添加物を用いるのでない限り、家庭の器具や機材で製作が可能であるため、数日置いた場合の食感や香り、味などにどのような変化が表れるかを体験しておいてもよかったのではないかと思われる。
 また、増田が5日間日持ちさせた上でカビが生えないようにするために考えた手法の『冷蔵で保管されていると思った』といった冷蔵保存が考えられるが、乾燥剤を入れていても結露するとおりカビはしないかもしれないが食感が悪くなることも気付くはずである。
 どうでもいいが、スイートポテトを残しておくのであれば基本的には冷凍する方が持ちはいいが、そこまでするなら不精せずに1回ごとに作れ、というのが順当ではなかろうかとか、この程度の低レベルな知識以外にも製菓関連の書籍などを漁れば様々な発展的知識を得ることは可能だろう。
 逆に『衛生的ではなく、まともに指導をしてもらえず知識がほとんどない状態で商品を製造する』なんてのは反面教師としてのまたとない機会で、就職してからでは、こういった経験はできないという貴重な体験をしていると考えるとよいのかも知れないが、結局のところ、そういった稀有な体験により食品が製造される状態に至る前段階の関所を自らの中に設けること(例えば、おいしく食べてもらうためには販売は製造した日とする、とか)を体験的もしくは論理的に行うことが実際に自らが自らの意志だけに基づいて材料を選び製造し販売する立場になったときに有効に機能するのではないかと思われる。
 と、バイトをしていた割烹の板さんが言ってたことの受け売り半分、自分の経験半分で書いてみた。
 ちなみに5日というのは、法的な意味で消費期限と賞味期限の境目なのだが、5日目に売るという数字的な意味があるのかどうか学校側に聞いてみたい気はする。
 多分あんまり考えてはなさそうだが。
 あと、増田の書きぶりから指導内容を推測するに、増田がどこまでの内容を学校で教えてもらえているのか見当がつかないが、個人的には、カビ本体のような目視確認できるものよりも、見た目でも味でも分からないものの方が様々な段階でのチェックをすり抜けてしまう関係上、より恐ろしいと感じる。
 カリキュラムとして教えられることがない(もしくは実体を成さない)のであれば、食に携わる者としては食品衛生の観点から必要な事項なので、体験に結び付けて学ぶ機会を持てたと考え方を切り替えた方が建設的かと思う。(確かに顧客視点で気に病むことも食に携わる者として必要かつ正常な心理状態であるのだが、あえて。)

 あと、コメについて。
 『製菓学校で、保存・販売のことまで考えるのは、無理なのかもね。』。
 製菓に限らず、およそ自らが独り立ちするならば上流から下流までのサプライチェーンマネジメントの領域であるとか、さらには人を雇い事業規模が大きくなり法人を運営する立場になればライフサイクルマネジメントの領域にまで手を出さなければならないといった食材や調理器具と格闘してればよいという次元から遠ざかる必要もあるのだが、雇われの場合は、保存はどうかは分からない(大規模な工場産品ならば、ひどい場合保管、検査、梱包、出荷のレベルで分断されていることもあろうかとは思う)が、下流側の販売と上流側の原材料の調達は組織として分離していることが多いと思われるし、逆にそこに横断的に異を唱えて首を突っ込むのは例えば料理人のような立場であった場合は自らのクビをかけてまで挑むことなのか、ということにもなりかねない。
 製販が分かれているもしくは分けることが可能であったことに起因した不祥事としては石屋製菓白い恋人)の消費期限の改竄(当時は個包装ごとに消費期限が表示されていなかった)とか、調達製造の分離に起因した不祥事としては阪急阪神ホテルズが運営するレストランでのバナメイエビなどの原材料の偽装表記とかが挙げられるのではないかと思われる。
 結局、各人の倫理的な問題という領域に丸投げすることになるのだが、難しいところだと思う。
 ただ、独立してすべての職務をすべて自身が行うようになってしまうと、誰の責任になるのかを考えるまでもなく自身がどうにかしなければならなくなることを認識する必要はあるだろう。
 しかしながら、要は自分の責任だから自分がケツを持てばいいと考えるだけでは進歩はなく、事態の短期的対応に加えていかなるプロセスに問題があったのかを改善しなければ、同じことが再度発生する可能性が高いことはリスクマネジメントなどの点から常識的なことだろう。
 というか、コメを読んでいて市井の料理教室の方がマシな学校もあるというのを見ると、専門学校を卒業して修行して独立するような立場を考えて経営概論的な座学なり実店舗での全体的な体験(学園祭でやきそば売る程度の算数レベルの話ではなく店舗マネジメントの領域までを含む)というのはないのだろうかという気もしなくはない。
 そもそも国内で統一的な教育内容が規定されてないはずなのでそれはそれでしかたがないのだが。

 『結露してるってことはホカホカの出来たてを袋詰めしたのかよ!』。
 うーん、具体的条件とそれを実際に検証してみないことには分からないが、多分あら熱を取ってから包装しても、それなりに冷めてから包装しても5日も経てば結露したかと。
 今回のようなカビの発生ということを考慮するならば、包装材料の付着や変形などの問題がない場合に限り、逆にホカホカの状態の方がカビの付着を抑えられることから有効だとは思われる(ただし食感などに影響が出る恐れはあるし、吸湿剤を増やす必要があるだろう)が、まぁ、利益相反かなぁ。
 増田は『衛生的ではなく』と表現しているが、保健所も失笑するレベルの非衛生的環境で実際に生産することはかなり難しくなってきている(あくまで難しいだけで存在しないわけでもなく少ないわけでもないが、認識した上で作為的に逃げ隠れしているので一般人には経験しづらいだけといえる)ので、劣悪な環境で5日放置しても見た目は変わらずに直ちに死なないレベルな食品っぽい何かを製造することが課題であったのなら、生徒の失敗である(ただし、担任の言う生徒の責任では当然ない)可能性もなくはないが、そんなものを人に食わせようとするのもそれはそれで人道的にどうなんだ、まさにエクストリームな課題だという話になりかねない。(これが認められるなら購入者も命がけなだけにエクストリームだな。)
 思考実験とするなら、5日持たせるために保存料(グリシンソルビン酸、プロピオン酸あたり)をぶっこんどけば問題なかったとかいうオチとかならなかなかおもしろい授業をしているとは思うが、そもそもそんな知識は特殊な業界を除き、まずといって役に立つことはないだろう。
 あと、大抵この手の話になると、私らの時代では最終兵器である放射線照射すればいいんでね?という話になったりしたものだが、コメにそういう話題が出ないあたり、隔世の感はある。
 というか、食に携わる者としては、国内で放射線照射を軽々しく扱えない(生鮮果物など食すこと自体が禁じられている食品も多いはず)ことも重要かもしれない。
 ここに書いたこと以外にもコメで様々な意見が述べられているが、表面的に単にスイートポテトを作って食べるというだけの十数文字で表現できる行為に関して、見栄えよくおいしく作ることとは別に、くらくらするほどの分量のリスクとそれに対する考察と付加的な行為、禁忌などを認知し考察し計画し行動し検証しフィードバックすることを含んでいることが理解できるのではないかと思われる。

 学校をやめるかやめないかについての何件かのコメと両論。
 細かい話ではあるが、何年制(多分1年か2年か)かの違いや学費、卒業まであとどれぐらいの期間残っているか、増田自身が短期的な利益ではなく長期的利益不利益などを勘案したかどうかなどを総合する必要があるのだろうが、今後製菓や食に関する方面で食べていこうとするなら感覚的にではあるが、学校をやめないほうがいいように思う。
 資格としての優遇(栄養士だと規定の学歴が必須)という短期的なメリットで考えるべきではないのかも知れないが、年寄りからすれば、若いころの1年はいたく貴重に感じてくるという思い出補正が入っているからかもしれないので、あまり感覚的判断の理由付けはしないでおく。
 増田が『まともに指導をしてもらえず知識がほとんどない状態で商品を製造する。』といった劣悪な環境であって、さらにそこから得ることが可能な、先述の製菓の国家資格などの取得といったことさえもみすみす逃すのでは、それこそ金だけかけてあまりネタにもならなさそうな思い出だけ抱え込んでしまうことになりかねない。
 コメに『マジで頑張らないとなんのスキルも身に付かず暗黒面に引きずられて終わる』とあるが、確かにある意味「あるある」で、ある意味「遊ぶ暇もねーわ!」って学校もあって何ともいえないが、増田の書きぶりからすると前者の学校なのだろう。
 そういった点から考えると、もうスキルを吸収する的なところは一端脇においてしまって、資格取得にのみ目標を絞るなどの行動の明確化を行えば暗黒面に引き込まれる可能性も低くなるのではないかと思われる。



 それはそうと、大昔の話だが、食品衛生学とかの実習で傷んだ食品を実食してみてその問題点を自ら知るなんてことをやっていたという話を聞いたことがあるのだが、都市伝説なのだろうか。
 下手したら死にかねない話なのだが、昔は今を基準にして下手したら死にかねない様々な行為を当時の学校教育の現場で平気で行っていたことを考えるとコトの真偽はよく分からないところではある。
 昔話はこのあたりにしておこう。